DX時代のコミュニケーションの落とし穴

この20年ぐらいで、人と人のコミュニケーションがとても複雑になっていると感じる。

私が社会人になった頃は、直接話することしかなかった。それ以外は、手紙や文書ということになる。大きな変化のきっかけは電子メールである。


未だに、多くの人が私と同じ考えであるが、面と向かって言わずに、“メールで済ます”は、ビジネス社会ですっかり定着してしまった。慣れとは怖いものだ。

私も自社でこの悪癖の撲滅に、もう20年近く苦心している。簡単に言うと、言いにくい話はメールでとなる。

では、仕事でどんな話が言いにくいか?

まずは、言いやすい話から考えてみる。仕事の良い結果は言いやすい。プロジェクトの進捗は順調です。営業でこんな受注を取りました。お客様から感謝の言葉を頂きました。頑張ってこの企画を期限通りに仕上げました。


まあ、子供時代から誰しも経験があるが、相手に伝える、相手に報告すると、相手が喜ぶ話、自分を褒めてくれるような話は、たいていの人が積極的に直接口頭で話をする。

もちろん距離が離れていれば電話で十分だろう。


この反対が言いにくい話である。

お客様からのクレームを受けた。見込みの受注予定を取り逃がした。納期が遅れている。企画書が仕上がっていない。まあ、仕事していると良い話よりも悪い話の方が多い。

ちゃんとした会社であれば、社員教育も日頃から欠かさず、情報共有や報連相などの基本は一定している。そういう会社で当たり前のように実践するのは、悪い話から報告する、まずは、お詫びする。こういうことが基本である。


例えば、顧客から残念ながら、クレームを受けた。相手は、必ずしも、直接クレームをこちらに伝えて来るとは限らない。人間の本質的な心理から言えば、直接のクレームを言える人は少ない。


そうすると、メールで来ることも多くなる。今なら、SNSということもあるだろう。こういう時に、間違いやすいこと。それは、メールにメールでお詫びしてしまう事。

シンプルに書けば、相手がどんな手段でクレームを伝えてきたとしても、こちらは、面と向かって謝る、対応するのが常識なのであるが、今のコミュニケーション環境で、こういうことを徹底するのは難しい。


まあ、冒頭で書いた話と関連して、未だにビジネスの場で後を絶たないのは、メールやチャットで相手に伝えておいて(正確には発信しておいて。相手が見たかどうかは分からない状態)、その相手に直接会っていても、席の横にいても、話すらしない。


私は、こういうコミュニケーションは基本を間違えていると考えている。

もちろん、こういう時代だから、便利なITツールは使えば良い。しかし間違えてはいけないのは、決して、自分にとって便利だから、都合がよいからという姿勢ではいけない。


コミュニケーションというのは、相手があって成立する。慮るというレベルはハードルが高くても、少なくとも、相手にとって便利なのか?相手が望んでいるのかをしっかり考えて、その相対で、コミュニケーションはしないといけない。


今、コミュ障という言葉も広まっている。もともと、人間関係の中でコミュニケーションが苦手な人が増えている。ますます、ビジネス社会でも、面と向かったコミュケーションが減っている。


これは明らかに、ITの弊害である。人間は基本、アナログの中で生きていくのであり、特別な場合を除いて、安易に直接のコミュケーションは避けてはいけないのである。


相手にそのメールやチャットを来る前に、相手がどう思うだろうか?気分を害しないだろうか?気にする負荷をかけないだろうか?相手の望んでいるコミュニーションなのか?これぐらいは配慮していきたいものである。


以上

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株式会社ブレインワークス 代表取締役 近藤昇