社長はチャットを使わないほうが良いと思う理由

この数年で一気に定着したITツールがチャットだ。

私なりに定義すると、基本的にはビジネスで使うコミュニケーションツールである。

いわゆるプロジェクトでのコミュニケーションや、組織活動における情報の共有や報告などにも使う。


では、このチャットというITツールの機能そのものが新しいのかといえば、そうではない。基本的に30年近く前に使われだしたパソコン通信と原点は似ている。

チャットというのは、ちょっとしたやり取りである。SNSに付随しているメッセージ機能と基本的には同じである。


ビジネスの現場においては、長年メールが使われてきた。私も今でもメールを使うが、今のビジネスパーソンはチャットやメッセージの方にシフトしてきていると実感する。


少し専門的に書くと、チャットでやりとりする情報は基本はフロー情報である。その対比で使われるのがストック情報である。

極端に書けば、前者は消えてなくなっても良い。シンプルにコミュニケーションするだけの機能といえる。後者は、従来のメールやグルーブウェアで使われてきた残しておくべきやりとりや文章である。

更に書けば、後者は会社の経営資産ともなるノウハウやプロセスの記録である。

チャットをほとんど使っていなかった数年前までは、今と比べたらとてもシンプルだった。そこにチャットというお手軽ツールが仕事場を席巻した。

電話がわりに使われることも多いし、この類の商品を提供している会社もそういう謳い文句だ。電話で話しなくても、メールで少しかしこまった文章でやりとりしなくても、要件だけ、ポイントだけを手短にやりとりする。場合によっては、挨拶もいらない。


何度も言うが、これは新しい概念でもなく機能でもない。パソコン通信が世の中に登場した時のコミュニケーションと大して差はない。


ただ、今は、環境が変わった。多くの人がITを使う。携帯電話を持っていない人は今の日本ではほとんどいない中、電話の代わりにチャットが使われるようになってきた。100%置き換わる方が、混乱はすくなくなるが、今は混在している。


様々なコミニュケーションツールが混在して使われる環境では何が起こるか?使っている人皆が同じように疲れている。ツールが多すぎると何が起こるか?どのツールで誰とやり取りしたかが曖昧になる。

昔、電話だと、言った言わないが問題になりがちだった。だから、メールを使ってエビデンスとする人も多い。ここまではよかった。それが今のようになると、言った言わないに加えて、どのツールで言った言わないとなってくるし、交換するやりとりがシンプル過ぎて、どうとでも解釈できるやり取りも増殖している。


私は、15年ぐらい前に、メールのマナーの本を発刊した。ヒューマンブラドシリーズの一環だ。

ここで力説したのが、自分の都合でメールを使わない。送った後は知らないという態度はとらない。自分の便利だけを優先しない。こういうことを真剣に書き込んだ。当然、今でもそういう使い方を推奨する。


あっという間に、ちゃかが無節操に広がった。私は、正直、使わないほうが良いと思っている。特に、私のような立場、つまり、責任者がこういうお手軽ツールには参加しないほうが良い。


無礼講という言葉がある。会社の飲み会などで、役職や立場関係なくざっくばらんに飲みましょうというあれだ。私は自分が部下だった時も、今も飲み会に関しては無礼講で通している。 

 

しかしだ。ビジネスの現場の無礼講は良くない。百害あって一利なしである。面と向かってのコミュニケーションの代わりに、ITを使うという問題も根底になる中で、無礼講的コミュケーションを助長しやすいこういうツールには社長などの立場の人は参加しないほうが良い。


自分の発信したいときだけ、情報を出す。相談もしかり報告もしかり、自分本位の使い方を助長するツールを、本来の目的で使うためにも、ここに組織の責任者は参加してはいけないのである。


以上

近藤昇オフィシャルサイト

株式会社ブレインワークス 代表取締役 近藤昇