やっぱりアナログ庁が必要な訳

今、日本はデジタルブームと言っても過言ではない。要因は大きく二つある。

一つは、DXが世間を席巻していて猫も杓子もDX一色になってしまったことだ。

ITに関する世界では、こういうバズワード的なブームを繰り返しているにすぎない。私のように約40年近くこの業界に関係していると、またかと、ある意味残念な気分にもなる。


もう一つは、デジタル庁が創設されたことだろう。国民にとってはとても新鮮だ。

平たく言えば、日本は、約20年前に電子立国日本を掲げて世界に先駆けて活動を始めた。しかし今は残念ながら、IT先進国とは言えず、かなり後れを取っている。この遅れを取り戻すべく、デジタル庁ができた訳だ。


これはいわゆる先進国の中だけでなく、エストニアなどの先進的に見える新興国にも劣っているというメディアの喧伝に乗っかれば、もっともらしく思えてしまう話である。


実際、最近こういう類の調査データも目につくようになってきた。日本は、2021年、IMD(国際経営開発研究所)の世界のデジタル競争力ランキングにおいては28位である。下げ止まった感はあるが、そろそろデジタル後進国入りいう感じである。

しかしながら、私のようにIT業界に長年関わってきた身からすると、冒頭で書いたように、どこかの業界の我田引水に他ならないかと思う。

その業界とは、言うまでもなくIT業界であるし、その関連業種だ。

例えば、昔は経営コンサルティング専門であったはずの会社が、中身をよくよく見てみたら、ITコンサルに入れ替わっていたりする。まだ、コンサル領域だけなら納得の範囲だが、じっくり分析してみたら、単なるSIer化しているだけだったりする。

もっと言えば、ソリューション提供とIRしていても、専門的見地で見れば、客先常駐型の派遣形態が大半を占めていたりする。とにかく、IT業界ぐらい判別の付きにくいものは無い。


では、政府の肝いりのデジタル庁、一体どんな活動をするのだろうか。

一言で言えばDXの推進という事になると思う。

実際、官公庁や自治体からは、歩調を合わせてDX推進のための公募案件が激増した。


中身を見てみると、確かに真のDX推進につながりそうなものも散見されるが、案件のほとんどは、従来通りの、業務改善やオンライン化、省力化の域を出ない。

私は、こういう活動は、当たり前のようにDX対応の前にすることだと考えているので、おおいにやればよいと思う。IT活用がまともにできていなかったのだから、当然だ。


ただ、RPAにしても今どきのITツールの基本的な目的は、省力化である。要するに、人の労働を自動化しようという流れであるから、仮にこのまま一気に官公庁や自治体のIT化(表向きはDX化であるが)が成功すると、劇的に公務員の数は減るのである。

企業でも人余りになって久しい。大企業は特にそうだが、すでに企業の省力化への取り組みは20年以上前から続いている。

銀行しかり旅行会社しかり。世の中にスマホが溢れ、ネットにつながり、お金の引き出し振り込み、旅行の予約、たいていどこからでもスマホでできるようになってきた。


行政はどうだろうか。今はまだどう考えても遅れている。住民票一つ、いまだに窓口に行くか出先のコンビニで取得である。民間サービスのIT化に比べて、相当な遅れである。この遅れを取り戻すことをDXとは流石に呼べない。


デジタル庁が本来推進しないといけないことは、山のようにある。

官公庁自治体が、率先してお手本となって、改革を進めるべきである。国民へのサービスの仕方、情報の有意義なマネジメント、地方活性化のための先進的な仕組み作りなど、沢山ある。

しかし、今進行していることは、基本的に大半が従来からのIT活用に他ならない。これがデジタル庁の役割にすり替わってはいけない。


そういう意味では、日本の国力の一つでもある、アナログ力を活かしたDX推進が重要である。デジタル庁には、旧態依然としたIT関係者ばかりだ。これでは、商売のための現場の実態を無視した押し付けのITしかできない。


だから私はアナログ庁も必要だと叫んでいるのである。メンバーはITに疎い人、距離がある人が望ましい。


以上

近藤昇オフィシャルサイト

株式会社ブレインワークス 代表取締役 近藤昇